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「〜結婚するときの注意点〜」

 
杉本和也 (杉本和也事務所)
  2003/11/11


行政書士 杉本和也氏が、プロの観点から身近な問題を取り上げて
難しい法律をわかりやすくお届けします。(編集局)






婚姻の実質的成立要件について

 国際化の進展と共に、「国際結婚」をするケースが増えてきました。
しかし、国際結婚は、日本人同士の結婚とは、全く同じだとはいいきれません。
例えば、日本人男性とペルー人女性が婚姻する場合を考えて見ましょう。
この婚姻が実質的に有効に成立するのか、の判断は、男性については日本の法律(民法)により、女性については、ペルーの法律によることになります。

 そして、婚姻の実質的要件には、一方当事者についてのみ問題となり、その者のみがクリアすればよい=一方的要件と、当事者双方について問題となり2人の者がクリアしなければならない=双方的要件があります。


 具体的には下記の表などです。

  【一方的要件】 【双方的要件】
@ 父母の同意 近親婚の禁止
A 婚姻年齢 重婚の禁止
B 婚姻意思の欠缺、錯誤、脅迫 相姦婚の禁止


そして、女性に対しては、ペルーの法律に照らして婚姻の実質的成立要件を満たしているか、男性は日本の法律に照らして婚姻の実質的成立要件を満たしているかどうかを確認する必要があります。

日本の民法の実質的成立要件の一例としては、婚姻年齢が「男子18歳以上、女子16歳以上」等です。これは、常識的に皆さん、何となく知っていることが多いと思います。

問題となるのは、相手側(この場合は、ペルー人女性)の国の法律がどうなっているかと言うことです。

ペルーの民法では、婚姻の障害として以下のような規定があります(抜粋)

 

1.婚姻年齢及び一般的な婚姻障害

未成年者(18歳に達しない者)は婚姻することができない。ただし,
裁判官が相当の理由があると認めるときは,男性は16歳,女性は14歳
まで婚姻年齢を引き下げることができる(民241条1号)。
また,慢性,伝染性等の病気をもつ者,聴力,視力あるいは言語機能
に障害があるため,自分の意思を明確に表示することができない者及び
慢性的な精神障害と診断された者の婚姻は認められない(民241条2号
〜4号)し,重婚は禁止される(民241条5号)。

2.近親婚の禁止

直系血族,三親等以内の傍系血族,直系姻族との婚姻及び養親と養子
及び養子の親族との婚姻等,法律が規定する一定範囲の親族との婚姻は
禁止される(民242条)。
3.後見人及び生存配偶者の婚姻の制限

後見人は,その職務を遂行している間又は管理の計算が終わらない間
は,被後見人(未成年者又は無能力者)と婚姻することはできない。た
だし,被後見人の父又は母が遺言又は公正証書でその婚姻を許可した場
合は,後見人と被後見人問の婚姻が認められる(民243条1号)。
生存配偶者(寡夫,寡婦)が,その親権に服する子に属する財産につ
いて最高検察庁の監査済の財産目録を作成したことを証明し得ない場
合,又は親権に服する子が存在しない旨若しくは子が財産を所有しない
旨を事前に宣誓申告しない場合はその婚姻は認められない(民243条2号)。
4.再婚禁止期間

女性は,夫の死亡,婚姻の無効若しくは離婚による婚姻解消後300日
を経過しない間は,出産した場合を除き,再婚することができない。な
お,裁判官は,夫による妊娠の可能性がない場合には,事情を考慮して
再婚禁止期間を免除することができる(民243条3号)。

5.同意を要する婚姻

未成年者が婚姻するときは,父母の同意を要する。父母の一方が同意
しないとき,父母の一方がいないとき若しくは完全な無能力者であると
き,又は親権を剥奪されているときは,他の一方の同意で足りるものと
されている(民244条1項・2項)。
父母が共にいないときや無能力者であるとき等は,祖父母の同意を要
し,その一方が同意しないときは,他の一方の同意のみで足りるものと
される。また,祖父母も共にいないとき又は完全な無能カ者であるとき
は,未成年裁判所の裁判官が,婚姻の許可・不許可を決定する。


これらの要件に照らして婚姻の要件を具備していることを公に認めるものとして、「結婚具備証明書」があります。しかし、この証明を発行する国は限られております。

ペルーの場合、この証明が発行されません。
従って、次のものが代わりの文書となります。

  ペルー大使館発行の独身宣誓書

  ペルー本国発行の独身証明書

これらの文書により、法律的に結婚ができる要件を備えていることが証明されるわけです。この証明がないと、婚姻届の不受理要件に該当してしまいます。
このように、『結婚の実質的成立要件』は、当事者の「結婚の意思」以前の問題として重要であります。
国によって、この要件は異なる場合があります。従って、国際結婚の場合、特に留意する点だと思います。

最後に
日本国内で、具体的な婚姻手続きを行う手順について簡単に触れておきます。
市町村窓口に下記書類と共に婚姻届を提出しますが、ペルー国籍の方との婚姻届の場合は<受理伺い>の扱いとなるため、婚姻届受理証明書の発行には時間を要します。

二人で用意するもの
婚姻届 証人2名の署名押印必要
 (証人の国籍は不問)
女性側が用意するもの
ペルー大使館発行の独身宣誓書、和訳
ペルー本国発行の独身証明書、和訳
ペルーの選挙手帳と申述書、パスポート

外国人登録原票記載事項証明書

日本で外国人登録している場合
 
尚、当該女性が再婚の場合は、
    離婚日の証明書  が別途必要になります。
男性側が用意するもの
戸籍謄本 本籍地以外で届け出る場合
住所証明書 住所地以外で届け出る場合



婚姻が正式受理されると婚姻届受理証明書が発行されます。
婚姻届受理証明書を外務省で認証を受け、2人でペルー大使館に出頭し、結婚登録書にサインをすると、ペルー大使館から結婚登録証明書が発行されます。

この証明書を持って、ペルー人女性は「日本人の配偶者等」への在留資格の変更をすることになります。

次回もお楽しみください。


お知らせ:
  2003.11.20 連載記事の
「用意するもの」を加筆修正しました。(杉本)

プロフィール
杉本和也(すぎもと かずや)

1997年8月に『杉本和也事務所』設立。現在、静岡県東部を中心に精力的に活動を行っている。1999年1月には入国在留審査関係申請取次者として承認される。主に外国人のための法律相談や無料相談会も月に1度、開いている。

ホームページ:
http://www.numazu.to/sla/

所属団体
日本行政書士会連合会
静岡県行政書士会