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「〜日本人と不法滞在の外国人との婚姻〜」

 
杉本和也 (杉本和也事務所)
  2004/09/24


行政書士 杉本和也氏が、プロの観点から身近な問題を取り上げて
難しい法律をわかりやすくお届けします。(編集局)






 不法滞在者(オーバー・スティ)であっても、婚姻の要件を満たし、書類が整っていれば日本人との婚姻届を出すことに問題はありません。

但し、不法滞在者に対して在日大使館等で「婚姻具備証明書」(第3回参照)を発行してくれない国がありますので、注意が必要です。

また、不法滞在者であっても90日以上日本に在留する場合は、「外国人登録」をする義務がありますので、もし、「外国人登録」をしていない場合は、合わせて登録申請を行います。

「婚姻できる」=「日本に滞在できる」では、ありませんので充分な注意が必要です。

従って、日本で婚姻生活を継続するには、いわゆる『在留特別許可』を申告しなくてはなりません。そして、入国管理局で法務大臣より在留の為の特別な許可を得れば、在留資格として「日本人の配偶者等」が付与されます。これによって、正規に日本に在留できるわけです。

【在留特別許可とは】

法務大臣が、不法滞在している外国人の事情等を考慮して、その在留を"特別"に許可するものです。

これを根拠に、日本人との婚姻があれば在留特別許可として、在留資格「日本人の配偶者等」が与えられることがあります。

この在留特別許可を与えるか否かは法務大臣の自由裁量でありますので、請求とか申請とか権利というものではなく、要件さえ満たせば確実に許可されるという性質のものではありません。

尚、在留特別許可の運用について、野沢法相は8月末の記者会見で「人道的な考慮をすべき方々に対しては積極的に運用する」と述べ、より柔軟に許可する方針を打ち出しております。

 在留特別許可を申告する為には、必要書類を揃えて各地方入国管理局(静岡県の場合は、名古屋入国管理局)へ出頭することになります。

【在留特別許可に関する提出書類】

※必要に応じて追加書類の提出を求められる場合あり

※各入国管理局により異なる場合あり

1.陳述書

2.本人の旅券

3.婚姻を証する書類

4.生活状況を証する書類

5.資産状況を証する書類

6.その他 日本人配偶者の履歴書など

出頭申告の際は、「在留特別許可」のためであることをハッキリと意思表示すること、窓口を間違えないこと、に注意してください。そうでないと帰国希望者と間違えられて、そのための手続きをされてしまう場合があります。

そして、必ず日本人の配偶者や子供と共に一緒に行くようにしましょう。

また、提出書類は、初回出頭時に完全に揃っていた方が望ましいと思います。その方が事務処理上の間違いも生じませんし、迅速に審査が進む要因にもなります。

出頭申告をすると書類のチェック及び事情聴取が行われます。

そして、後日、入国警備官によって自宅周辺の聞き込み調査や自宅訪問によって、婚姻の真実性の調査が行われます。

また、別途、入国審査官による違反審査が実施されます。これは、各地方法務局へ本人が出頭して行われます。事例によっては、何回も出頭を求められる場合があります。

これらの審査及び調査は、1年程度掛かるようです。

そして、日本の治安に影響を与えるものではなく、婚姻の信憑性・安定性があると判断されれば、在留特別許可に基づいて在留資格を得ることになります。

(出頭申告からのプロセスの詳細は、杉本和也事務所HP内「在留特別許可申請のフローチャート」をご参照下さい。)

但し、単に婚姻関係があれば、在留特別許可が必ず下りるわけではないということは留意しておくべきです。

また、申告のときに添付する陳述書には、可能な限り真実を正確に記載し、虚偽の事項は絶対に記入しないようにしなければなりません。虚偽の記入により、申請人が不利益を受けることがあります。

出頭する前に、入国管理局長法務大臣から承認を受けた申請取次行政書士からアドバイスを受けることをお勧めします。


【申告中の注意】

前述のように、在留特別許可の申告から決裁がされるまでには、かなりの時間を要する場合があります(近頃、迅速な対応がなされ、比較的短期間で決済されるケースが多いようです)。

入管では、在留特別許可申告中の立証として、申請の事実を示す何らかの書類を渡すことが多いようです。

しかし、申告中だからといって、正式な決裁が下りるまでは、不法滞在者であることには変わりありません。

つまり、在留特別許可申告中であっても、外国人登録法上の無申告罪や不法残留者として警察に身柄を拘束される場合もあります。しかし、この場合でも、申告中ということで、罰金刑や執行猶予がつくことが多いようです。

ですから、申請の事実を示す書類は、必ず身に付けておいた方が良いと思います。

 また、申告中には名古屋入管から色々な問い合わせや出頭要請がある場合もありますので、何時でも必ず連絡がとれる連絡先(携帯電話番号等)を申告しておくことも重要です。

【参考資料】

不法滞在などの外国人に法相の裁量で特例として日本での定住を認める「在留特別許可」について、法務省の情報公開した内部文書により、以下のように取り扱っていることが明らかになっております。

法務省が日本人と結婚している者や難民認定者などを対象に4つの許可要件を規定しています。

4要件のいずれかに該当すれば、地方入国管理局長などの判断で許可できます。

不法滞在外国人の「在留特別許可」希望が急増し、これに対応するため具体的要件を設け、1992年から地方入国管理局に判断を委ねているようです。

 同省が公開した違反審判規定と要領によると、地方入国管理局で決裁できるのは

〈1〉日本人、永住者、特別永住者と結婚し、入管難民法には違反しているが、他の法律には違反せずに生活し、強制退去を避けるために婚姻を届けた疑いなどもない

〈2〉難民認定を受け、ほかに法令違反の疑いがない

〈3〉日韓基本関係条約が1965年に発効する前に不法入国した韓国・朝鮮人など

〈4〉前3項のいずれかに該当する者の子供として日本で生まれ、親に養育されている者

――に該当するケース。

〈1〉〜〈4〉に該当し、政治、治安などに影響を及ぼす恐れがない場合などに限って許可できます。

プロフィール
杉本和也(すぎもと かずや)

1997年8月に『杉本和也事務所』設立。現在、静岡県東部を中心に精力的に活動を行っている。1999年1月には入国在留審査関係申請取次者として承投される。主に外国人のための法律相談や無料相談会も月に1度、開いている。

ホームページ:
http://www.numazu.to/sla/

所属団体
日本行政書士会連合会
静岡県行政書士会